1.2階部分が店舗、3階以上が住居である複合用途型マンションの店舗の営業時間についての制限は、規約事項であるから、規約上では「総会決議により定める」旨のみ規定し、管理組合総会で営業時間を午前10時から午後10までとする旨を決議したことは無効であるとしてなした店舗所有者の確認請求について、規約事項ではなく、また合理性を欠くものでもないから「特別の影響」を及ぼすものではないとして、原審同様にこれを棄却した事例。
東京高等裁判所 平成15年12月4日判決
1.2階部分が店舗、3階以上が住居である複合用途型マンションの店舗の営業時間についての制限は、規約事項であるから、規約上では「総会決議により定める」旨のみ規定し、管理組合総会で営業時間を午前10時から午後10までとする旨を決議したことは無効であるとしてなした店舗所有者の確認請求について、規約事項ではなく、また合理性を欠くものでもないから「特別の影響」を及ぼすものではないとして、原審同様にこれを棄却した事例。
東京高等裁判所 平成15年12月4日判決
本件は、原告の管理組合法人が、共用部分に当たる駐車場躯体部分のコンクリート劣化抑制工事と併せて、被告の区分所有者の専有部分である地下1階の同駐車場打ち放しの壁面の塗装工事を行い、被告に工事費の20%の負担を求めることとする集会の決議を経て、工事を行った。同駐車場の塗装工事の実施について事務管理が成立するか、事務管理に伴う費用償還請求が争われた事例である。当法人の規約には、専有部分である設備のうち共用部分と一体となった部分の管理を共用部分の管理として一体として行う必要があるときは、原告がこれを行うことができるものとされている。
判決は、同駐車場の塗装工事を行うことは、被告の意思に反することが初めから明らかであったと認められず、原告が被告のためにその事務を管理する一面をも有するものとして、事務管理が成立するとした。
東京地裁 平成16年11月25日判決(確定)
6年半分総額約54万円の管理費滞納を理由とする区分所有法59条競売請求を認容した欠席判決に基づく競売について、同条は「当該区分所有者の区分所有権を売却することによって当該区分所有者から区分所有権を剥奪することを目的として、競売の申立人に対する配当を全く予定していないものであるから、同条に基づく競売においては、そもそも、配当を受けるべき差押債権者が存在せず、競売の申立人に配当されるべき余剰を生ずるかどうかを問題とする余地はない」として民事執行法63条2項による無剰余取消決定をした千葉地裁松戸支部の決定を取消して、マンション法59条に基づく競売には剰余主義の適用がないことを明確にした。また区分所有法59条競売には、民事執行法59条1項に定める消除主義が適用されることも明確にした事例。
東京高裁判決 平成16年5月20日
マンションの販売担当者から「フリースタンパー工法によって飛び跳ねても階下に振動など響きません。」などと説明されてマンションを購入した原告が、遮音性が劣るなどとしてマンション販売業者に損害賠償等を求めた事案において、振動の軽減、遮音性について標準より優れた性能を備えたマンションを提供することが売買契約の債務の内容となっていたとして、振動の軽減・遮音性に瑕疵があったと認定し、マンション販売業者に補修工事費相当額の損害賠償を命じた事例。
福岡地裁判決 平成16年3月2日
マンション1階店舗の焼鳥屋の排煙設備が共用部分に設置されているとして、区分所有者らが共用部分の共有持分に基づく妨害排除請求権に基づいてその撤去を求め、かつ不法行為に基づく損害賠償を請求した事案において、①本件排煙設備の設置が共用部分の変更に該当するにもかかわらず、区分所有法17条所定の区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会決議がなされていないとして、妨害排除請求権に基づく本件排煙設備の撤去を命ずるとともに、②同設備の設置によって一部の区分所有者には受忍限度をやや上回る騒音・臭気・圧迫感等の被害が発生しているものと認定して損害賠償請求を認めた事例。
東京地裁判決 平成15年2月20日
(ⅰ)管理組合の当事者適格について、管理組合が管理すべき共用部分に起因して個々の区分所有者に損害が発生した場合、その区分所有者に帰責事由がない限り、管理規約に基づいて管理組合に対して請求できるとした。(ⅱ)屋上排水ドレーンのゴミ詰まりによる漏水事故について、管理組合に区分所有者に対し、管理規約による管理義務の不履行に基づく管理責任を認めた。(ⅲ)屋上、外壁クラックからの雨水の浸入を原因とする水滴による和服の変色等の損害について、管理組合にマンションの賃借人に対し、民法717条1項の責任を認めた。(ⅳ)床下排水管のうち、階下との境界をなす中央部にある部分は共用部分であるが、その上にある床下の空間にある部分は専有部分に属すると判断した。
福岡高裁判決 平成12年12月27日
平成14年8月新築のマンションで、当初ペット飼育に関する規約上の定めなく、ペット飼育禁止として説明販売していたところ、販売実績が伸び悩んだため、後にペット飼育可能と説明して販売した。その後管理組合総会において、ペット飼育禁止規約条項が追加され、既に飼育している者は一代限り飼育を認めることが決議された場合において、分譲業者は説明義務違反に不法行為責任に基づき、当初の購入者に対しては慰謝料等11万円が、後の購入者(入居後犬が死亡し、理事会から特例として再購入を認められたが、総会で反対されて断念した)に対しては、慰謝料70万円外合計90万円の支払いが命じられた事例
大分地裁判決 平成17年5月30日
原告の管理費の滞納は、原告自身正当な根拠ないし権利に基づくと考えてあえて行なっているものだから、そのことを管理組合員に知ってもらって何ら不都合はないはずである。その問題が総会の議題とされれば、原告としては自己の見解を訴え管理組合員の理解を得るよう努めればよいから総会の議題とされたことによって人格が傷つけられ社会的名誉が毀損されたとの主張は矛盾する。総会議案に提案したことは管理組合理事として正当な職務行為であるから、原告の名誉を毀損する違法行為ということはできない。
広島高裁判決 平成15年1月22日
平成10年に平成4年以降の管理費や特別修繕費を滞納していたマンションを購入した者に対して、管理組合が平成12年に裁判上の請求手続をとった事例において、通常の管理費だけではなく特別修繕も民法169条所定の債権として5年間の短期消滅時効により消滅するとして、適用を否定した東京高裁の判断を破棄自判して管理組合に逆転敗訴を言い渡した。なお以下の福田博裁判官の補足意見が付されている。
マンション等の区分所有建物においては、経常的な経費を賄うために徴収される通常の管理費とは別に、共用部分の経年劣化等に対処するための修繕費用は必ず必要となる。そのために要する費用は往々にして多額に上ることから、これを修繕を行う際に一度に徴収することは実際的とはいい難い。管理組合が長期的な収支見通しの下で計画的な積立てを行ってこれに備えるのが修繕積立金と呼ばれるものであり、将来への備えとして、このような対応が必要となる。修繕積立金は、区分所有建物の資産価値を維持保全するためのものであり、区分所有関係を維持していくために必要不可欠である。このような修繕積立金の性質からすると、「短期消滅時効の適用により、不誠実な一部の滞納者がその納付義務を容易に免れる結果とならないようにするための適切な方策が、立法措置を含め十分に検討されるべき」である。
最高裁判所判決 平成16年4月23日