■区分所有法59条の競売請求に無剰余取消の適用を否定

6年半分総額約54万円の管理費滞納を理由とする区分所有法59条競売請求を認容した欠席判決に基づく競売について、同条は「当該区分所有者の区分所有権を売却することによって当該区分所有者から区分所有権を剥奪することを目的として、競売の申立人に対する配当を全く予定していないものであるから、同条に基づく競売においては、そもそも、配当を受けるべき差押債権者が存在せず、競売の申立人に配当されるべき余剰を生ずるかどうかを問題とする余地はない」として民事執行法63条2項による無剰余取消決定をした千葉地裁松戸支部の決定を取消して、マンション法59条に基づく競売には剰余主義の適用がないことを明確にした。また区分所有法59条競売には、民事執行法59条1項に定める消除主義が適用されることも明確にした事例。

東京高裁判決   平成16年5月20日

2015年2月1日 | カテゴリー :

■管理費等の消滅時効は5年

平成10年に平成4年以降の管理費や特別修繕費を滞納していたマンションを購入した者に対して、管理組合が平成12年に裁判上の請求手続をとった事例において、通常の管理費だけではなく特別修繕も民法169条所定の債権として5年間の短期消滅時効により消滅するとして、適用を否定した東京高裁の判断を破棄自判して管理組合に逆転敗訴を言い渡した。なお以下の福田博裁判官の補足意見が付されている。

マンション等の区分所有建物においては、経常的な経費を賄うために徴収される通常の管理費とは別に、共用部分の経年劣化等に対処するための修繕費用は必ず必要となる。そのために要する費用は往々にして多額に上ることから、これを修繕を行う際に一度に徴収することは実際的とはいい難い。管理組合が長期的な収支見通しの下で計画的な積立てを行ってこれに備えるのが修繕積立金と呼ばれるものであり、将来への備えとして、このような対応が必要となる。修繕積立金は、区分所有建物の資産価値を維持保全するためのものであり、区分所有関係を維持していくために必要不可欠である。このような修繕積立金の性質からすると、「短期消滅時効の適用により、不誠実な一部の滞納者がその納付義務を容易に免れる結果とならないようにするための適切な方策が、立法措置を含め十分に検討されるべき」である。

最高裁判所判決   平成16年4月23日

2015年2月1日 | カテゴリー :